植物化石や地学の楽しさを伝えていきます!

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研究部自然研究グループ 学芸員

成田 敦史

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。

植物の化石もある!

皆さんは、「化石」と聞いたらどんな古生物を想像するでしょうか?各種講演や授業などで同じ質問を投げかけますと、返ってくる答えとしては、「恐竜」、「アンモナイト」、「三葉虫」、「マンモス」などが大多数を占めます。少し詳しい方からの「アノマロカリス」や「始祖鳥」などの答えもあります。これらの古生物は、いずれも動物です。しかし、ここで声を大にしてお伝えしたいのは、植物も立派な化石になるということです。植物も化石になるの?という声が聞かれることもありますが、もちろん植物の化石もあります。あまり知られていないようですが、北海道からも多くの植物化石が見つかっています。

その化石の状態にもよりますが、葉脈がはっきりと残っている葉の化石(図1)や、細胞の配列が立体的に残っている材化石など、まるでいま生きている植物ではないかと見間違えるほど美しい状態の植物化石もたくさんあります。北海道で多産する石炭や花粉・胞子化石なども植物化石です。

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図1 シラカンバに近い広葉樹の葉化石(Betula protojaponica)。糠平湖畔の680万年前の地層から採集。

植物化石を研究材料に、地質時代の植物の姿、植物の系統や進化史、古植生、陸上の古気候(大昔の気温や降水量など)などを明らかにしていく研究分野が古植物学です。私は大学生のころから北海道内の各地域・様々な時代の植物化石の研究を行ってきました(図2)。また、古植物学やそれに関係する地学全般の効果的な教育についても研究と実践を重ねています。今回は、私の行っている植物化石の研究と地学教育についてご紹介します。

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図2 左写真;国際学会で発表している筆者(2023年8月)。スライドは、本別町で見られる地層の積み重なりを表した図(地質柱状図)。 右写真;その図の基になった実際の地層の一部(斜交層理砂岩層)。

植物化石から植生と気候を復元する

恐竜やマンモスゾウの姿を復元するには、当然ですがこれらの化石を調べる必要があります。では、それらの動物が生きていた時代に、周辺の陸上にはどんな環境があったのか、についてはどのように調べるのでしょうか?答えは、「化石が含まれていた地層や植物化石を使って調べる。」です。恐竜などの陸上動物の周辺にあった植生や陸上の気候は、植物化石から明らかにすることができます。

地質時代の植生や気候というと、「恐竜の時代にはソテツのような裸子植物が多く、気候は温暖でした」などとザックリとした推定はよく耳にするかもしれません。実際には、植物化石と地層の解析(図2)から、「9000万年前の北海道では河川付近の洪水の起きやすい場所にスズカケノキなどの広葉樹が、河川から遠い場所ではナンヨウスギなどの針葉樹林が存在した。」というような、より詳しい局所的な古植生も明らかにすることもできます(図3)。

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図3 植物化石と地層の解析から推定される後期白亜紀の北海道付近の植生のイメージ図(Narita et al. 2008などを基に作成)

古気候についても、葉化石の縁にギザギザがついているか、いないか、葉の先端は長く伸びているか、いないか、などの形を観察して集計し、数学的な手法を用いることで、過去の年平均気温が具体的に何℃だったか、降水量は何mmか…などのかなり詳細な気候条件の算出と解析ができます。すると、例えば1300万年前当時の北海道北部は現在よりも2~3℃気温が高く、冬場の降水、すなわち降雪も多く、秋田県あたりのような気候だったこともわかります(表1)。これほど詳細が復元できるとは、かなりの驚きのことではないでしょうか。

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表1 葉化石群から計算された古気候データの例と、比較対象の現代の洞爺湖の気候データ (Narita et al. 2020; 成田・乙幡 2023より引用)

高山植物の祖先?の葉化石

現在、私は十勝平野の700万~100万年前ころの植物化石群の研究に特に力を入れています。一部には新種と考えられる化石も含んでいます。これまでほとんど報告のなかった高山植物の祖先かもしれない植物の葉化石も見つかっています。研究の進展にご期待ください。

楽しさを伝える地学教育

私は小学校入学前から「恐竜大好き少年」でしたが、縁あって植物化石の研究を行うことになりました。動物化石では決してわからないような大昔の環境のことも調べられる植物化石の魅力にすっかりハマりました。こんなに楽しい世界を知らない人が多いというのはもったいない!という思いと、古植物学のみならず関連する地学の各分野にも関心が強かったこともあり、一度は高校教諭として教壇に立ちました。そのころの経験や古植物学の研究内容も活かすことで、年齢や関心に合わせた地学の各種講座や巡検なども積極的に行っています(図4)。

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図4 小学生に化石のレクチャーをしている筆者

残念ながら現在の地学教育は充実しているとは言い難い状況です。だからこそ当館などを利用して、実物の化石や地層を観て、感じて、周りの世界の見え方が変わる体験が重要になります。その際、化石や地層を漫然と見て終わるのではなく、“視点を絞って”どこをどのように観察するかが重要なのです。また、教えすぎも逆効果です。そこで、「探究心」を高めるため、博物館資料を観察する様々な課題を学ぶプログラムやワークシートについても作成中です。例えば、実際の骨格を見て、「なぜマンモスゾウの方がナウマンゾウより体が大きいのか」、「なぜ歯の化石は他の部位の化石よりも多産するのか」、などを考えるようなプログラムです。このような探究を通して、見える世界が変わると、学ぶことも楽しくなってきます。視点を変え、「学ぶって楽しい!」と思えるような地学教育をさらに進めたいと考えています。古植物学の研究と並行して、地学教育の充実にも務めていきます。

  • 参考(引用)文献

    Narita, A., Yamada, T. and Matsumoto, M., 2008, Platanoid leaves from Cenomanian to Turonian Mikasa Formation, northern Japan and their mode of occurrence. Paleont. Res., 12, 81-88.
    Narita, A., Yabe, A., Uemura, K., and Matsumoto, M., 2020, Late middle Miocene Konan Flora from northern Hokkaido, Japan. Acta Palaeobot., 60, 259- 295.
    成田敦史・乙幡康之,2023,北海道中央東部糠平湖周辺の後期新生代の古植生と古環境:後期中新世十勝幌加植物群と前期更新世タウシュベツ植物群.地質学雑誌,129,289-305.