天然記念物 渡島大島の調査(速報)

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研究部自然研究グループ 学芸員

圓谷 昂史

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。

はじめに

「渡島大島に調査に行きます」と話をすると、ほとんどの場合「どこにあるの?」という質問が返ってきました。確かに、奄美大島や伊豆大島といった観光地と比べると、知名度は高くないかもしれません。しかし、渡島大島は、海底火山の噴火によってできた火山島であり、周囲の島々とは海で隔てられており、また現在は無人島であることから、独自の自然環境を見ることができる国内でも貴重な場所なのです。

ここでは、2021年7月30日(金)に実施した、北海道博物館初となる(旧北海道開拓記念館を含む)、渡島大島の調査の概要をご紹介します。

近いけど遠い渡島大島

渡島大島(以下、本島とする)は、北海道南部にある渡島半島の日本海側、西方約50㎞沖合に位置しています(図1)。

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図1 渡島大島の位置(網掛け部分は調査範囲)

本島は、海鳥であるオオミズナギドリの北限の繁殖地として、全域が国の天然記念物に指定(1928年3月24日指定)されるなど、自然環境の保全のため特別な規制が設けられています。上陸はもちろんのこと、島内で活動をするためには、関係省庁などから許可を受ける必要があります。今回の調査は、1年以上前から計画を立て、さまざまな準備と調整を重ねてきました。また、通常離島を訪れる際には、定期便の船舶や航空機を利用することになりますが、本島への定期便はなく、船をチャーターする必要もありました。これらの準備が整っても、簡単に上陸はできません。島に渡るためには、気象条件(特に、風向きと波)に恵まれることが重要です。今回は、調査直前に発生した台風8号の接近で悪天候が続き、4日間の足止めを喰らいましたが、ようやく5日目に出港することができました。島までは、片道3時間の道のりです。船はなかなか揺れましたが、島が近づいてくると、いよいよ上陸できる、という期待に胸が膨らみました(図2)。

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図2 上陸前に船からみた渡島大島

いざ調査!

本調査の目的は、本島の動植物を主な対象として基礎データを蓄積することです。島での滞在時間は8時間余りと、必要十分な調査時間ではありませんでしたが、当館の堀繁久学芸部長(昆虫調査)、水島未記学芸主幹(海岸生物調査)、鈴木あすみ学芸員(鳥類・哺乳類調査)の4名で上陸し、調査を実施しました。

私の調査対象は、①潮間帯に生息する貝類、②海岸に流れ着いた海洋ゴミの2つでした。調査範囲は、島の東側海岸になります(図1)。海岸には断崖が迫っており、平地はほとんどありません(図3)。大きな礫がゴロゴロとして足場が悪く、重たい道具を背負いながら、30℃を超える炎天下での調査は想像以上に過酷でした。

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図3 海岸の様子(トリカラスノ浜)

まず、①の貝類調査では、波打ち際の岩や礫に付着する貝類と、海岸に打ち上げられた貝殻を採集しました(図4)。その結果、十数種類を確認することができました。これまで私は、日本海北東部域の離島(北海道日本海側の奥尻島、天売島、焼尻島、利尻島、礼文島、及びサハリン島日本海側のモネロン島(海馬島))の海岸で調査を実施しました。これらの地域は、日本海を北上する対馬暖流の影響により、生物の南限と北限が混在する地域となります。また近年では、これまで確認されていなかった、より南方の海域に生息する暖流系貝類も発見されています。今後、調査結果を基に比較・検討することで、本地域の生物地理などを明らかにしていきたいと思います。

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図4 採集した貝類(カサガイの仲間)

次に、②の海洋ゴミ調査では、海岸に流れ着いたものの撮影と計測を行いました。ペットボトルを中心とした飲料容器、破片化した発泡スチロールが多くを占め、漁具なども確認できました(図5)。また、これらに印刷されたバーコードを調べると、日本製品を主体に、中国、韓国、ロシアなどの近隣諸国をはじめ、マレーシアやベトナムの事業者が製造したものも含まれていることがわかりました。近年、世界的な環境問題として海洋ゴミ(主に、プラスチック製品)が取り上げられています。海洋ゴミの種類や量を把握することは、海洋ゴミ問題解決にむけた貴重なデータとなるので、調査結果をしっかりとまとめたいと思います。 あっという間に時間は過ぎ、調査は終了となりました。北海道に向かう前に、船で島を一周する機会にも恵まれました。これまで見たことのない独特の景観を各所で見ることができ、地形や植生の無いむき出しの山肌は、かつての火山活動を感じさせてくれました(図6)

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図5 漂着した海洋ゴミの様子(トリカラスノ浜)
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図6 島の北西側(ヤケクズレ岬)の様子

おわりに

今回の渡島大島の調査は、とても貴重な機会となりました。本稿は速報のため、それぞれの調査結果の詳細をお伝えすることはできませんでしたが、別の機会で報告したいと考えています。

なお、本調査は、新型コロナウイルス感染症対策を徹底し、関係者の皆様のご理解とご協力をいただく形で実施しました。ご協力をいただきました関係者の皆様には、この場をお借りして心より御礼を申し上げます。