引揚の記憶–全国樺太連盟資料から–

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北海道研究センター(人文系) 学芸員

石子 智康

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。


森のちゃれんがニュースのVol.41にて、総合展示第4テーマのリニューアルについてお伝えしました。今回は、リニューアルに併せて、新しく展示した資料の中から、樺太からの引揚に関する資料をご紹介します。

全国樺太連盟資料について

当館では、2020(令和2)年に、一般社団法人全国樺太連盟から資料を受け入れました。全国樺太連盟(以下、樺太連盟)とは、1948(昭和23)年に樺太からの引揚者の援護や厚生、福利を目的に、樺太引揚者によって設立され、会員の高齢化や減少に伴い、2021(令和3)年に解散した団体です。この樺太連盟が行ってきた、多岐にわたる活動の中で、「樺太博物館」の設立に向けた資料収集がありました。この活動では、会員に呼びかけ、全国から樺太に関する資料を約9,000件近く収集しています。1992(平成4)年からは、北海道庁西18丁目別館に「樺太関係資料展示室」、2004(平成16)年からは道庁赤れんが庁舎2階で「樺太関係資料館」として、これまで収集した資料を展示していました。加えて、全国各地で移動展を開催し、樺太の記憶を継承する活動を実施していました。

このように全国から収集し、展示に活用していた樺太連盟の資料は、2019(令和元)年に北海道博物館への移譲が決定しました。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2020年12月から順次、資料の受入を行いました。これらの資料は、『北海道博物館資料目録第3号全国樺太連盟資料1』(2024年3月)で文書資料と図書資料、『北海道博物館資料目録第4号全国樺太連盟資料2』(2025年3月)では絵葉書、写真や映像などの記録資料、生活資料などに加えて、稚内市へ移譲された資料について目録化しています。なお、これらのPDFデータは当館ウェブサイトで公開しています。

引揚証明書

上記のように受入を行った全国樺太連盟資料の中から、総合展示第4テーマでは「引揚証明書」を展示しています(写真1)。引揚証明書とは、その名の通り、海外から引き揚げてきたことを証明する書類で、本籍地や引揚前の住所、職業が記載されています。また、被服の点数や食糧、日用品の支給状況についても記載があります。樺太からの公式引揚は1946(昭和21)年から開始されているため、本資料は、その第一次引揚の際に発行された証明書になります。第一次引揚では、5,000人を超える人々が日本へ引き揚げてきました。公式引揚は、度々の中断がありながらも1949(昭和24)年まで続き、約25万人以上が引き揚げてきました。しかしながら、引き揚げられなかった人々、いわゆる残留の問題は、その後も続いていきます。

以上、総合展示第4テーマの全国樺太連盟資料を紹介しました。また、全国樺太連盟資料の一部は、2025年7月にリニューアルした道庁赤れんが庁舎地下1階「樺太関係資料室」でも展示しています(写真2)。ぜひそちらにも足をお運びください。

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写真1 総合展示第4テーマ「引揚証明書」
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写真2 樺太関係資料室での展示(道庁赤れんが庁舎地下1階)
  • 参考文献

    『北海道博物館資料目録第3号 全国樺太連盟資料1』(2024年3月)
    『北海道博物館資料目録第4号 全国樺太連盟資料2』(2025年3月)
    函館引揚援護局局史係編『函館引揚援護局史』1950年、函館引揚援護局