- 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。
著者プロフィール
1995年、京都府生まれ。富山大学大学院修了。2021年より当館学芸員(担当は地学)。専門は、地質学および地質年代学。
はじめに
「白亜紀」は、約1億4,500万年前~6,600万年前にあたり、陸では恐竜が、海ではアンモナイトやモササウルスが生息し、多種多様でとてもダイナミックな時代でした。「白亜紀」という時代に興味を持ったのは、小学生の頃にハマった恐竜がきっかけでした。恐竜がいつ、どのような場所で生きていたのだろうか?と疑問に思ううちに、白亜紀の地質や年代学に魅力を持ち、研究をしたいと思うようになりました。それ以来、学生時代を通して、日本各地の白亜紀の砂岩や泥岩などの堆積岩の調査や年代測定に関する研究をしています。
さて、私の研究についてよく聞かれるのは、「ドリルなどの大きな機械で岩石を削ったりするのですか?」や「どうやって岩石の年代を測るのですか?」です。実際には、山の中を歩きながら、ハンマーなどを用いて岩石を砕いたりしながら調査します。今回は、北海道での白亜紀の地質調査や年代測定に関する研究について紹介いたします。
北海道の白亜紀の地層を探し求めて
白亜紀の堆積岩は、北海道のあらゆる場所に存在するわけではありません。例えば、北海道中軸部の稚内、小平、夕張、三笠、穂別や北海道東部の根室、厚岸です。この地域には、白亜紀からその後の古第三紀にかけて海で砂や泥が堆積してできた「蝦夷層群」や「根室層群」と呼ばれる地層が分布し、数多くのアンモナイトや二枚貝(イノセラムス)化石が発見されています(図1)。近年では、むかわ町の「カムイサウルス・ジャポニクス」といった恐竜化石が発見され、北海道は「化石の宝庫」として非常に注目されています。
私は、このような化石が含まれる白亜紀の地層を対象に地質調査をしています。地質調査では、地形図を頼りにしながら、地層が露出している場所(露頭)を探します。その後、探し出した地層を地形図に記録し、どのような岩石からできているのかを調べていきます(図2)。地質調査では、図3のような道具を主に使用します。岩石がどのような鉱物から成り立っているのかを調べるときは、ハンマーを用いて岩石を砕いた後、ルーペで観察し、その岩石の種類を判定します。また、地層面の向き(走向)や傾きを調べるときには、クリノメーターという器具を用いて測定します。このような作業から得られた結果を地形図に記録し、「ルートマップ」や「地質図」を作成します。また、岩石を薄く磨いたもの(薄片)の作成や年代測定用の岩石試料も採取します。
また、地質調査の一環として、地層の剥ぎ取り標本も作製しています。地層の剥ぎ取り標本は、現場で露出する状態に近い形で地層を室内で観察することができるため、調査研究以外にも展示など様々な活用ができます。そこで、2022年10月下旬、十勝郡浦幌町にて白亜紀-古第三紀(K/Pg)境界を含む地層周辺の調査および剥ぎ取り標本の作製を試みました(図4)。白亜紀-古第三紀境界(約6,600万年前)を含む地層(図5)は、恐竜やアンモナイトが絶滅した時期の貴重な地質学的記録を残しており、東アジアでも唯一、北海道の浦幌町に存在します。地層の剥ぎ取り標本の作製を行うのは、当館に着任してから初めてでしたので、非常に難しかったですが、当館調査メンバー、浦幌町立博物館の持田 誠学芸員、および足寄動物化石博物館の澤村 寛特任学芸員と協力し、K/Pg境界層が綺麗に見える標本を剥ぎ取ることができました(図6・7)。今後、教育普及や展示などで利活用できるように、研究を重ねていきたいと思います。
恐竜やアンモナイトが生きていた年代を調べる
アンモナイトや二枚貝の化石からは地層の年代を推定でき、非常に重要ですが、具体的な年代を数字で知ることはできません。近年の科学技術の発達により、様々な岩石中に含まれるジルコンという鉱物を分析することで、化石が産出する岩石の形成年代を知ることができます。調査で採取した岩石を粉々に砕いた後、ジルコンとその他の鉱物を分離するパンニングや重液分離という作業を行い、色々な鉱物の中からジルコンを一粒ずつ選別します。その後、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置という特殊な機械を用いて、ジルコンに微量に含まれる元素のウランと鉛の同位体比を局所的に分析することで、岩石の形成年代を推定できます。例えば、北海道の三笠市に分布する蝦夷層群三笠層の砂岩に含まれるジルコンの年代を測定した結果、約9,500~9,000万年前を示しました(図8)。このことから、三笠層から産出するアンモナイトは、約9,500~9,000万年前(セノマニアン~チューロニアン)に生息したことが分かります。現在、当館が収蔵するアンモナイトや他の研究も含めて、蝦夷層群の年代を検討しており、今後、研究結果を公表したいと思います。
おわりに
今回は、私の白亜紀の地質に関する研究の一端についてご紹介いたしました。北海道の「白亜紀」について分からないことはまだまだあります。少しでも詳細に明らかにできるように、これからもさらに研究を重ね、展示などを通して、「白亜紀」の色々な魅力をお伝えしていけるよう努力してまいりたいと思います。