ある日、豊平川河川敷に舞い降りた落下傘(らっかさん)

AUTHOR

学芸部長

池田 貴夫

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。

私は、1997(平成9)年8月1日に当時の北海道開拓記念館(現在の北海道博物館)に赴任し、以来、約26年間にわたり学芸員としてさまざまな博物館活動に携わらせていただきました。そのなかでも、資料の収集活動は思い出深い仕事の一つでした。

モノを寄贈したいとの電話を受けます。実際に、そのお宅に赴いて、モノを見せていただきます。あわせて、さまざまなお話を聞かせていただきます。そのうえで収集するか、辞退するかを検討してきました。そして、お話をうかがうなかで、「磨けば磨くほど黄金に輝く時計」、「私の命よりも大切なビールグラス」といった、所有物へのさまざまな愛着の表現を耳にしてきました。資料の収集活動をとおして、モノを相手に仕事をするということは、人の心に耳を傾けることに他ならないということを学びました。

特に、下の落下傘に出会った瞬間は、強烈でした。この2つの落下傘は、2005(平成17)年に江別市在住の方から寄贈を受けたものです。寄贈者からの話によると、1930~31(昭和5~6)年頃、豊平川の花火大会で打ち上げられた花火から舞い降りてきた落下傘だったそうです。1921(大正10)年生まれの夫が拾い、亡くなるまで、大事にとっておいたといいます。また、夫は、この頃の花火大会では、この舞い降りてくる落下傘を子どもたちがこぞって拾ったと語り継いでいたようです。

約100年前、名も無き製作者がこの落下傘づくりに込めた思い。これを子どもの頃に拾い、一生をかけて保管し続けた寄贈者の夫の思い。これを博物館に託そうとした寄贈者の思い。この2つの落下傘を凝視していると、それらの思いがなんとなく伝わってくるような気がするのは、私だけでしょうか。そして、そういった人びとの心の連鎖さえも、語りかけてくれている気がしてならなかったのです。

画像
サイズ:高さ63㎝×幅46㎝ 材質:紙 形状:袋状 収蔵番号:152053
画像
サイズ:高さ113㎝×幅36㎝ 材質:紙 形状:袋状 収蔵番号:152054