貝製平玉 ―貝取澗2洞窟遺跡出土―

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研究部歴史研究グループ 学芸員

右代 啓視

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。

貝製平玉は、ネックレスやブレスレットなどを飾る玉です。この資料は、道南のせたな町大成の貝取澗2洞窟遺跡から出土したものです。北海道博物館(当時:北海道開拓記念館)が1990~1995年にかけ、サハリン州郷土博物館、ハバロフスク州郷土博物館から研究者を招き学術調査を行った成果となる資料の一部です。この洞窟遺跡の調査では、2千数百年前の続縄文前半、恵山文化の人びとが海岸洞窟をどのように利用したかを明らかにしました。また、東北地方の弥生文化後期の人びととの交流もみられました。

その成果の一例として、洞窟内で貝製平玉を製作していたことがわかりました。二枚貝のエゾタマキガイ(Glycmerisy essoensis)の殻を素材に、円形に加工し、中央に孔があけられています。この平玉の径は5~6mm、孔の径は3~2mm、重さは0.11gで、とても小さなものです。写真の右から斜めのものがほぼ完成品です。洞窟遺跡では、この貝殻の破片が多くみられ、完全な形状の貝殻はほとんど出土していません。これらを基に製作工程を調べると、荒割(写真上)をして形状を整え、貝殻の内側から孔をあけ、最後に外側から孔を貫通させています。仕上げは、円形に整え磨いて完成、貝殻破片の観察でわかりました。エゾタマキガイの貝殻構造は2層になっており、外層はカルサイト(方解石)、内層はアラゴナイト(霰石)です。外層のカルサイトは比較的に硬く、内層のアラゴナイトは柔い特徴を持っています。硬い外側から孔をあけると、割れてしまいます。恵山文化の人びとは経験的に、その特徴を熟知していたようです。

画像
貝取澗2洞窟遺跡から出土した貝製平玉類と素材片(為岡進氏撮影)

写真の右下には、ボタン状の玉や別素材の玉があります。この中に、巻貝のスガイ(Lunella correensis)の蓋に孔をあけようとしたもの、二枚貝のマガキ(Crassostrea gigas)の番部を加工した玉があります。

これらの素材は洞窟の前浜から集めたものと考えられ、このスガイとマガキは現在、暖かい海水域に生息しています。洞窟が利用されていた当時は、現在よりも温暖な環境であったことが読み取れます(弥生海進期に対応)。

貝製平玉は、かつて白く美しく煌びやかな装飾品として加工されたもので、東北地方の弥生文化にもみられ、さらに西日本、朝鮮半島南部にまで拡がりを持ちます。北海道では紀元前後ころ南西域で盛んに作られていました。

この白い貝製平玉に対して、石狩低地帯などを含めた北東域では、赤い琥珀製平玉が盛んに作られていました。代表的な余市町大川遺跡、江別市元江別1遺跡、芦別市滝里遺跡などがあり、数千をこえる琥珀製平玉が出土しています。この琥珀製平玉は、赤く輝いた美しい装飾品です。

この時期、南の白い貝製平玉と、北の赤い琥珀製平玉との異なった装飾品が存在します。異文化と在地文化の脈動を物語る重要な資料です。

  • 貝取澗2洞窟遺跡出土の貝製平玉の一部が総合 展示で見ることができます。収蔵番号:124556
  • 参考(引用)文献

    『貝取澗2洞窟遺跡』2001;北海道開拓記念館研究 報告,第17号.