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総合展示第3テーマ「北海道らしさの秘密」のコーナーに、矢谷重芳が編集した『北海道百番附』の内、大正5年(1916)の「主要物産番附」を展示しています(写真1)。同番附によると、「鰊」、「鰊鯑」、「鰊油」、「鰊搾粕」、「身缺鰊」など、ニシンとその加工品が多数ランクインしており、当時の北海道における漁業生産額の50%前後をニシンが占めていました。そんなニシンの加工品である、みがきにしんをそのままで食べることについて紹介します。
みがきにしんは、素干しし、脊肉部を切り取ったニシンのことです(大島1981)。干すことで長期間の保存が可能になり、熟成されて味や香りもよくなります。一般的にはこれを水戻しして、煮物やにしん漬けなどにします。
一方、北海道の一部地域、たとえば岩内町や利尻町・利尻富士町などのニシン漁で栄えた地域では、皮を剥き、そのまま食べることがあります。昭和33年(1958)に岩内町で生まれた私の母から教わった、みがきにしんをそのままで食べる方法は以下のとおりです。
1 ソフト・八分乾ではなく、本乾のみがきにしんを用意します(写真2)
2 手で皮を剥きます
3 身をはさみ等で食べやすい大きさ(1.5-2.0cm)にカットします
4 カットした身を味噌と和えて完成です(写真3)
このまま食べても美味しいのですが、味噌を和えた後に時間を置くと、若干身が柔らかくなり食べやすくなります。骨が多いため、食べる際には注意が必要です。また、本乾と言っても、乾燥しきって固くなり過ぎたものは避けたと言います。昭和8年(1933)生まれの岩内町出身の私の祖母によると、皮を剥き、むしって、味噌等をつけずに、おつまみ感覚で食べていたそうです。同様に、青森県津軽地方の農村部でもみがきにしんに味噌をつけ、酒の肴として食べていたことが報告されています(高橋1986)。
道内から全国に流通し、様々な食文化を育んだみがきにしんをそのままで食べることは、生産地の北海道に伝わる、野趣あふれる食文化の一つと言えます。
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引用文献
大島浩 1981「身欠きニシン」北海道新聞社編『北海道大百科事典』下巻
高橋みちよ 1986「津軽の食」「日本の食生活全集青森」編集委員会編 日本の食生活全集②『聞き書青森の食事』農山漁村文化協会