北海道博物館所属の谷口生貴斗学芸員が日本民俗学会研究奨励賞を受賞しました!

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2026年10月17日(土曜日)・18日(日曜日)に東京都町田市で開催された日本民俗学会第78回年会において、北海道博物館 北海道研究センター所属の谷口生貴斗学芸員が、「一般社団法人日本民俗学会研究奨励賞規定」に基づき、研究発表「「震えない身体」に集う人びとー北海道木古内町佐女川神社寒中みそぎにおける行修者の「辛さ」ー」で、第46回日本民俗学会 研究奨励賞第3部門 (口頭発表)を受賞しました!

【発表要旨】
 本発表は、北海道上磯郡木古内町で伝承される「佐女川神社寒中みそぎ」について、中心的な神事を担う行修者における「震えない身体」実現の「辛さ」が、神事の継続にいかに関与しているか、そこに集う人びとの視点から考察を試みようとするものである。
 佐女川神社寒中みそぎは、若者が厳寒の津軽海峡に入る光景から、道内外で「奇祭」として知られる神事である。天保2(1831)年から続くとされ、道の無形民俗文化財に指定されている。
 例年1月13日から15日まで行われる神事では、4名の若者からなる行修者が佐女川神社の社殿に籠もりつつ、褌姿になって冷水をかぶる水垢離を行う。15日には神体(神像)を持って津軽海峡へと入り、禊をおこなう。行修者は未婚の男子が4年間務めるとされ、1年目が弁財天、2年目が山の神、3年目が稲荷、4年目が別当と呼ばれる。かつて行修者は町内の若者、特に中高生がその多くを担ってきた。しかし近年では成り手不足が深刻化し、町外へ公募が行われる状況が生じている。
 行修者は神事にあたって、難しい所作などの習得が求められるわけではない。しかし参籠の間、3時間許される睡眠を除いては、氷点下の中で30分ほど冷水を浴び続ける水垢離を、ほぼ1時間ごとに繰り返す必要がある。水垢離では、行修者の「震えない身体」が規範化されている。身体が震える行修者がいれば、行修者のOBを中心とした保存会メンバーから檄が飛ぶ。その中で行修者は、身体的・精神的な困難と向き合いながら、「震えない身体」を演じようとする。
 そのような行修者に対して、かつて観客を対象に実施された「行事を見ての感想」のアンケート結果は、「感激した」「すごいと思った」「かっこいい」といった選択肢を上回って、「寒くてつらいだろうと思った」が最多であった[財団法人地域伝統芸能活用センター 1998 77]。観客は、褌姿の行修者が、氷点下で3日間昼夜を問わず冷水を浴び、津軽海峡を泳ぐ姿に「辛さ」を想像する。そこには、行修者における「震えない身体」実現の「辛さ」が、行修者当人、そして観客に認識される過程が、神事の継続に関与している状況を見て取れる。
 発表者は、令和7(2025)年から行修者になった。これまでに2回、冷水を浴び続けた経験から、自身の身体をめぐる苦悩、周囲から投げかけられた言葉などを振り返り、一方で神事に生じている現代的な状況も参照しつつ、担い手の「辛さ」は行事の継続にいかに作用しうるかを論じたい。
【参考文献】
財団法人地域伝統芸能活用センター 1998 『地域商工業振興モデル調査 北海道』

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