録音・録画・筆録資料の公開に向けて

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アイヌ民族文化研究センター長

小川 正人

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。

博物館が保有する資料は、改めて言うまでもなく、道民の共有財産です。ふだん展示室に出している資料はそのごく一部で、ほとんどは収蔵庫で保管していますが、それらの資料についても、「この資料をしっかり見て学びたい」といった希望があれば、閲覧していただけることが基本です。これは、博物館にとって大事な原則の一つなのです。

ただ、この原則を一部制約せざるを得ない場合が、いくつかあります。資料がたいへん傷んでいるため現物を閲覧していただくことができない、といった事例はその一つです(資料のデジタル化を進めて、傷んでしまった資料でもデジタルデータを閲覧できるようにしていこう、というのは、この制約を少しでも回復させるための取り組みでもあります。)

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写真1 録音資料の公開版CD ここに例示したのはアイヌ文学研究者・久保寺逸彦による録音資料の公開版です。 図書室の書庫で保管しています。
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写真2 文書資料の公開版(デジタル画像データからのプリントアウト) ここに例示したのは、アイヌ語地名研究者・山田秀三による地名調査の記録ファイルの公開版です。現在は図書室の閲覧室に配架しています。

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資料の中に、個人情報やプライバシーが含まれるもの、写真などの場合では肖像権に対する配慮が必要なもの、原稿やノートなどで公表権に配慮する必要があるもの……といったケースについても、慎重な配慮に基づく適切な措置が必要です。

そのような資料は、さまざまなテーマや内容についてあり得るものですが、アイヌ民族の歴史や文化においても、伝承者や体験者からの聞き取り等によって記録された資料や、録画、写真など(これらをまとめて「採録資料」と呼んでいます)は、調査研究や文化伝承などにとってとても大切なものであると同時に、だからこそ、語り手やそのゆかりの方々らの個人情報やプライバシー、肖像権や著作権などについての慎重な配慮が欠かせません。

博物館などの公的な機関が保有する資料は、基本は皆に使っていただくためにあるものですが、同時に、語り手などの方々の権利を損なうことがあってはならない――このことを適切に両立させるために、当館アイヌ民族文化研究センターでは、次のような考え方・進め方で資料の整理に当たっています。

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先ず、新たに資料を受け入れたときや整理作業に当たる際に、こうした配慮が必要な可能性のあるものの有無を確認します。

その上で、慎重な取り扱いが必要と判断した資料については、担当する職員が資料の内容点検を進めます。

そして、できるだけ、語り手や書き手など資料の関係者(ご本人が物故されている場合はそのご遺族)にこれらの資料のことをお知らせし、公開して差し支えない範囲や、公開にあたっての条件などを協議させていただくようにしています。

こうした整理作業を通して、公開できる資料とその範囲を判断しています。録音、録画資料や筆録資料の場合は「この資料の中のこの部分は公開すべきではない。しかしそれ以外の部分は公開して差し支えない」という整理結果になるものも多く、その場合は、資料の公開版を作成する際に非公開箇所を削除する等の編集を行うことにしています。

語り手やそのご遺族との協議は、ときに長い時間を要することもあり、協議の相手方となる方々にも少なからぬお手数をおかけすることになるのですが、このような協議をしっかり行うことで、資料を適切に公開できると考えています。

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こうして公開までの準備を終えた資料について、順次、公開用のデジタル複製を作成していきます。録音資料や録画資料の場合CDまたはDVDで、筆録資料や写真資料についてはデジタル画像データからの紙焼きなどで作成しています。いずれも、当館図書室で閲覧・視聴していただくことができます。

2022(令和4)年12月現在で、録音・録画資料のCDやDVDは約400点、文書資料をプリントアウトした冊子は約100冊に達したところで、これからも整理と公開を進めて参ります。様々な学習や地域の文化、先人たちの足跡などを知る手がかりとして、活用いただければ嬉しく思います。