北海道立アイヌ民族文化研究センターの20年(下)

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アイヌ民族文化研究センター 学芸員

小川 正人

北海道博物館の前身の一つである、北海道立アイヌ民族文化研究センター。前号(https://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/learn/17040/)では、「1設立まで」と「2事業の立ち上げ」を通して、アイヌ民族文化研究センターの開設までを振り返りました。今回は、開設後の事業の歩みをたどります。

3 事業の展開(1) 1994~2003年度

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写真1 オープンリールテープの点検

アイヌ民族文化研究センターが設置後先ず取り組んだ事業の中で大きな位置を占めたもの一つが、寄贈を受けた「山田秀三文庫」(アイヌ語地名研究者・山田秀三の旧蔵資料。1994年7月受贈)、「久保寺逸彦文庫」(アイヌ文学研究者・久保寺逸彦の旧蔵資料。1997年7月受贈)等の整理と保存、目録刊行でした。オープンリールテープやガラス乾板写真、数多くの筆録ノートやたくさんの書き込みのある地形図など、様々な状態の資料について、内容の記録をとりつつデジタル化等の保存処理を進め、2003年度までに計8冊の目録を刊行しました。

また、北海道立図書館に所蔵されていた北海道教育委員会によるアイヌ文化に関する調査事業で作成された録音資料などについても、保存のためのデジタル化を進めました。

並行して、職員による調査・研究にも着手し、当初は職員が各地を訪れ、アイヌ語や物語、様々な生活体験などについて聞き取らせていただくことや、道内各地に残されている資料の調査や整理に取り組みました。

普及事業では、1994年が国連の定める「世界の先住民の国際10年」のスタートの年であったことから、これに関する道の取り組みの一環として、アイヌ文化を紹介するパンフレット(小冊子)を毎年1冊ずつ作成することとし、1995(平成7)年の「はなす(アイヌ語)」から2003(平成15)年の「地名」までの9巻を発行しています。

4 事業の展開(2) 2004~2014年度

開設から10年を経たころから、調査・研究や資料の収集整理の成果をどのように提供していくか、ということにも事業の重点を置くようにしました。

特に、昔の録音や録画、筆録ノートや写真などを、関係する人々の様々な権利(プライバシーや公表権、著作権など)に配慮しつつ、どのように公開していくことが適切なのか、基本的な考え方やそれを具体化する制度や手続きの検討に時間を割き、2003(平成15)年度ごろから、順次、こうした資料の公開に着手しました。

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写真2 資料の公開版

資料整理の成果を提供する方策の一つとして、2004(平成16)年度から展示会の開催にも取り組み、山田秀三文庫などを紹介する企画展を道内各地で開催しました。調査研究の成果を提供する方法としては、開設初年度から毎年『研究紀要』を発行していましたが、2004(平成16)年度から中・長期的な調査研究の成果をまとめた『調査研究報告書』の刊行を開始し、2010(平成22)年までに6冊を刊行しました。

また、2001(平成13)年度に開設したウェブサイトを段階的に整備し、出版物のPDFファイルや連載記事の掲載、公開した録音資料の紹介などを進め、2012(平成24)年には、公開したアイヌ語資料を検索でき一部は試聴もできる「ほっかいどうアイヌ語アーカイブ」を開設しています。

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写真3 資料閲覧コーナー

5 北海道博物館への継承

この間、2008(平成20)年度に、中央区北1条西7丁目プレスト1・7ビルから、北3条西7丁目緑苑ビルに移転、また2010(平成22)年に道が北海道博物館基本計画を策定する中で、北海道開拓記念館との統合により北海道博物館の一翼となって、道立の総合博物館としての事業を担う中で、設置目的であるアイヌ民族文化の調査研究や資料・情報の収集と整理を進め、その成果の普及を図ることとなりました。

2015(平成27)年の北海道博物館発足以後、博物館の一部門であるアイヌ民族文化研究センターとして、様々な展示や普及行事の企画・実施を担ってきました。これからは、道立の資料保存利用機関として、資料を整理し、公開し利用を進めていく役割も改めて充実させていきたいと思います。