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山田秀三文庫とは
北海道博物館が収蔵する「山田秀三文庫」は、アイヌ語地名研究の第一人者である山田秀三(1899~1992)の旧蔵資料です。
資料の中心は言うまでもなくアイヌ語に由来するとされる地名に関する調査記録で、近世の古地図から近現代の地形図までのさまざまな地図、現地調査の際に撮影した各地の写真、北海道・東北各地での調査の記録をまとめたノートなどがあります。
山田秀三はまた、八重九郎(1895~1978)、知里真志保(1909~1961)、萱野茂(1926~2006)らの、アイヌ語・アイヌ文化の伝承者や研究者として知られる人々と交友を持ち、北海道文化財保護協会(1961年設立)やアイヌ文化伝承保存会(のちアイヌ無形文化伝承保存会、1974年設立)などの設立・運営の中心を担った一人でもあり、こうした人々や組織との関わりを物語る記録も多く含まれています。
さまざまな貌・特色を持つ資料群
山田秀三文庫のもう一つの特色として、1945年までを商工省などの官僚として生き、その後、乞われて北海道曹達株式会社の経営に当たり、そのかたわら地名調査に没頭してきた……という山田秀三の経歴や、古代史や民俗文化などへの関心を反映して、戦前期の産業政策に関する資料や北海道曹達の草創期に関する資料、鹿島神宮、上賀茂神社、伊勢神宮などを訪れた記録、山の辺の道を歩いた記録などさまざまな内容の資料が多く含まれることが挙げられます。
今回は、そのいくつかの例をご紹介します。
関東地方の地名を調査した記録
山田秀三の著作の一つに、『関東地名物語―谷・谷戸・谷津・谷地の研究―』(草風館、1990年)という本があります。そこには、アイヌ語に由来する地名とは別に、東京周辺の地名、特に「渋谷」「四谷」などの「ヤ」や「ヤツ」「ヤチ」「ヤト」の付く地名に関心を持ち、自ら文献を調べつつ現地調査を重ねた成果がまとめられています。
山田秀三文庫には、東京都、神奈川県、埼玉県、群馬県などで現地調査も行った記録などをまとめたファイルなどが残されています。
各地の神社などを訪れた記録
いくつかの神宮、神社を訪れたときの記録が、地名調査の記録と同じようなかたちでまとめられているファイルも見られます。
戦時下の産業政策に関する資料
山田秀三は、戦時下の日本の産業政策や資源政策にも携わりました。山田秀三文庫には、量としてはさほど多くはないものの、当時の会議資料や刊行物が含まれています。
これらの、山田秀三文庫のさまざまな分野の資料は、当館が総合博物館であることを活かして、より多様な利活用を図ることができるのではと考えており、引き続き整理につとめていきたいと思っています。