
江戸時代のおわりごろ、1836(天保7)年に行われた、「人魚」の見世物の引札(案内ちらし)です。口上(説明文)によると、この「人魚」は、「松前のおく蝦夷」の漁師が捕まえてミイラにしたもので、後に「能登の国」(現在の石川県)の人の手にわたって、とある神社に寄進され、その神社の座敷にて一般に公開されることになったようです。どこの神社か、いま一つはっきりしませんが、「当座摩の御社」とあるので、現在の大阪市にある坐摩神社かもしれません。
また、口上には、「人魚」を一度見れば、第一に長寿になる、福徳が増し、疫病にかからないという、いにしえよりの言い伝えがあると宣伝されています。江戸時代には、めずらしい動物の見世物がしばしば行われていますが、それらの引札でも長寿や疫病よけといった「御利益」がうたわれることが多く、ある種、お決まりの文句だったと考えられます。
さあさあ、みなみなさま、世にも珍しい人魚の絵に、好きな色をぬって、おうちに飾ってみませんか?
- もともとの資料は、「〔人魚の図〕」(1836(天保7)年刊/木版)[北海道博物館蔵弥永コレクション]です。
- 口上の文章は、古文書解読のテキストとしてもお使いいただけます。レベルは初級編くらい? ぜひ挑戦してください!
2020年4月23日公開