野幌丘陵から新たに発見した貝化石

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研究部自然研究グループ 研究職員

圓谷 昂史

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。

今回紹介する収蔵資料は、2015年から実施した当館の研究プロジェクト「石狩低地帯北部地域を中心とした新生代の古環境復元」の地質調査で、当館が建つ野幌丘陵から新たに発見した貝化石についてです。

化石というと、最近では恐竜をイメージされる方が多いのではないでしょうか。テレビや映画などでもよく取り上げられており、化石界のヒーロー的存在です。そんな彼らと比べると、貝化石は地味な存在と言えます。しかし貝類は、恐竜が繁栄するはるか昔、約5億年前から地球上に生息しています。現在、世界中には、約10万種以上が知られており、超深海(6,000m以深)から高い山の上まで、長い年月の中で、多様な環境に進出し適応してきました。そして、硬い石灰質の殻をもつものが多いことから、他の動物と比べて化石として残りやすく、量・種類共にたくさん発見されるため、当時の古環境を知る重要な手がかりになります。

今回、新たに発見した貝化石は、合計83種類になりました。詳しく分析をした結果、3つの特徴が明らかになりました。1つ目は、すべて海に棲む種類であるということです。2つ目は、岩場または砂地に棲むものなど、生息する場所や環境が異なる種類が、混在しているということです。貝化石が発見された地層の特徴を詳しく解析した研究によると、貝化石が堆積した当時は、海面が上昇しているとき(海進期)であり、この地域は日本海と太平洋をつなぐ海峡であったことがわかっています(加藤ほか2018*1)。貝化石の多くは、海峡の強い流れに流されて周囲から集まってできたものと考えられます。3つ目の特徴は、絶滅した種類が11種類含まれているということです(写真1)。

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写真1 野幌丘陵から新たに発見した貝化石(絶滅種)

1.コシバニシキガイ Chlamys cosibensis(184760),2.ミョウガダニマルフミガイCyclocardia myogadaniensis(184769),3.オンマフミガイMegacardita ommaensis(184770), 4.サワネイソニナSearlesia japonica(×2.0)(184739),5.カガニヨリマンジ Propebella kagana(184746)

これまで野幌丘陵からは、6種類の絶滅した貝化石が発見されてきました。しかし、今回発見された11種類の内、9種類は初めて見つかった種類でした。貝類に限らず、絶滅した生物の化石は、その地層ができた年代を知る手がかりになります。今回は、貝化石とプランクトンなどの微化石の分析、軽石の年代測定を行いましたが、年代を決定づける証拠が不足していたため、正確な年代はわかりませんでした。しかし、状況証拠をつなぎ合わせると、前期更新世の終わりごろ(約120万~78万年)の可能性があると推測することができました(圓谷ほか2018*2)。

野幌丘陵は、約70年前から多くの研究者による調査が行われており、貝化石をはじめ、カイギュウやクジラ、ゾウなどの多くの化石が発見されています。これらの化石は、北海道の過去の様子を教えてくれる貴重な資料です。今回の貝化石は、そこに新たな知見を与えてくれるものとなりました。今後も調査を継続し、より詳しい北海道の過去の様子を皆様にお届けしたいと考えています。なお、これらの貝化石の一部は、2020年4月10日(金)まで、当館の総合展示室第1テーマで展示しています※。是非ご覧ください。

※ 本記事で紹介した化石は、総合展示第1テーマで数ヶ月間(不定期)展示されています。ご覧になりたい場合は、事前にお問い合わせください。

  • 参考(引用)文献

    *1 加瀬善洋・林圭一・圓谷昂史・添田雄二・栗原憲一・畠誠・廣瀬亘・大津直(2018).北海道 北広島市西の里で認められたサンドリッジ堆積物の堆積相・古流向とその意義.北海道博物館研究紀要,3,133-141
    *2 圓谷昂史・添田雄二・栗原憲一・加瀬善洋・鈴木明彦・能條歩・畠誠・林圭一・廣瀬亘・大津直(2018).北海道北広島市西の里で認められた第四系の地質年代,北海道博物館研究紀要,3,143-161