採録資料「小川シゲノさんのお話」

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アイヌ文化研究グループ 研究職員

大谷 洋一

  • 職員の所属・役職は、森のちゃれんがニュース発行当時の情報です。

今回紹介する資料は、1996年から2002年までの間に平取町貫気別生まれの小川シゲノさん(1921~2010)から私が録音した資料15点についてです。これらは北海道博物館の図書室において全て公開中です。

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小川シゲノさん(鈴木まり子氏提供)

小川さんは近隣に住む人たちに起きた災いや病気の原因を占う巫女として地元で活躍し、日常的にカムイ(神)へ祈るアイヌ女性の一人でした。調査当初の小川さんは物語の録音は許されましたが、信仰についてはためらいを見せました。特に、カムイに関することを話すのは、厳格な父親から強く戒められていたと言います。たとえば「二風谷アイヌ語教室広報誌第39号」(1995年11月発行)の取材で小川さんは「父親はパウェトㇰ(雄弁、話し上手)だったけど、よく『エタㇻカイタㇰ アシトマㇷ゚(いいかげんな言葉はおそろしいものだ)』」と語ったと話しています。そんな想いがあった小川さんは、録音されてもよい話題を自ら選択して話されていたのです。

小川さんが語るウエペケㇾ(散文説話)は多くの日本語が混ざっていますが、カムイユカㇻ(神謡)というジャンルはアイヌ語で語り通します。これは個々の物語で定まっているメロディーに乗せて演じるカムイユカㇻの方が鮮明に記憶されやすかったのだろうと推測します。カムイユカㇻは、怠け者がカムイから罰せられて月に送られた話、鳥たちの宴会で酔ったカラスが醜態を晒した話、ポイヤウンペ(英雄叙事詩の主人公)からアイヌの村を守るように諭されたオオカミの話の3編があります。

ウエペケㇾの方は他では聞けない内容のものが多く、ギョウジャニンニクのカムイに養われた男の話、山でクマに遭遇して赤ちゃんを置き忘れて逃げた女の話、ヤナギとナラの木の会話を聞くことで病人を救えた女の話、ソㇿマ(コゴミ)という言葉を恐れた伝染病のカムイが村に近づかなかった話、人食い山男の燃えた灰がアブになって今も人の血を吸うという(白老という地名由来)話、夜盗に襲われて両親を失ったが臼のカムイに救われた男の話、川下の者と川上の者が体験する滑稽話などの12編があります。小川さんは、よく私に「なんでも聞いてコチャヌㇷ゚コㇿ(参考になる)すれ」と言いました。皆さんのアイヌ文化・アイヌ語の学びにつながる小川さんのお話を当館の図書室に来てぜひ聞いていただければ、と切に願う次第です。

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公開用CDは当館の図書室で聴けます

小川シゲノさんの公開資料一覧

  • 【No.1】公開資料番号:CC800001/採録年月日:1996年7月25日/略内容:ウエペケㇾ 2 編、カムイユカㇻ 1 編
  • 【No.2】公開資料番号:CC800022/採録年月日:1996年9月25日/略内容:ウエペケㇾ 1 編
  • 【No.3】公開資料番号:CC800206/採録年月日:1996年11月21日/略内容:ウエペケㇾ 1 編
  • 【No.4】公開資料番号:CC800024/採録年月日:1996年12月22日/略内容:ウエペケㇾ 1 編
  • 【No.5】公開資料番号:CC800208/採録年月日:1997年2月27日/略内容:ウエペケㇾ 2 編
  • 【No.6】公開資料番号:CC800233/採録年月日:1997年4月25日/略内容:ウエペケㇾ 1 編
  • 【No.7】公開資料番号:CC800234/採録年月日:1997年7月12日/略内容:ウエペケㇾ 1 編
  • 【No.8】公開資料番号:CC800235/採録年月日:1997年9月25日/略内容:アイヌの食事について
  • 【No.9】公開資料番号:CC800236/採録年月日:1997年9月25日/略内容:アイヌの食事について
  • 【No.10】公開資料番号:CC800237/採録年月日:1998年8月8日/略内容:アイヌの食事について
  • 【No.11】公開資料番号:CC800238/採録年月日:1999年4月27日/略内容:ウエペケㇾ 1 編、カムイユカㇻ 1 編
  • 【No.12】公開資料番号:CC800209/採録年月日:2000年1月29日/略内容:ウエペケㇾ 1 編、カムイユカㇻ 1 編
  • 【No.13】公開資料番号:CC800207/採録年月日:2000年5月27日/略内容:ウエペケㇾ 1 編
  • 【No.14】公開資料番号:CC800210/採録年月日:2001年5月27日/略内容:穂別に歩いて行った時の思い出
  • 【No.15】公開資料番号:CC800239/採録年月日:2002年6月21日/略内容:苦労話、短い祈り言葉