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今回は、2022年に収蔵した少し珍しい岩石標本を紹介します。写真1の岩石は、「ランプロファイアー」と呼ばれる岩石で、鉱物の一種の黒雲母を多く含み、肉眼でも確認できるほどキラキラと綺麗に光って見えるのが特徴です。この岩石標本は筆者が当館に赴任して初めて、先輩からの指導を受けながら、資料調査や収蔵を行った標本であり、思い出に残る資料の一つです。今回はこの資料の地質・岩石学的な側面をご紹介したいと思います。
ランプロファイアーは、火山のマグマが固まってできた火成岩の一種で、黒色~灰色を示します。鉱物は、主に黒雲母や単斜輝石などの有色鉱物を含みます(写真1)。この岩石は、北海道の浦河地方の乳呑川流域に露出しており、黒雲母の放射年代測定から、新第三紀中新世(約1,770万年前)に形成されたと推定されています(久保・佐藤,1984)。また、浦河地方には、この岩石以外にも「蝦夷層群」と呼ばれる白亜紀~古第三紀の海の泥や砂が固まってできた地層が分布します(酒井・蟹江,1986:図1左)。蝦夷層群は、恐竜やアンモナイト化石が数多く産出する、日本の恐竜時代を代表する地層の一つです。実は、浦河地方のランプロファイアーの形成は、蝦夷層群の地層と密接に関係します。
一般的に地層は、泥や砂が水中で平行に堆積して形成され、ケーキの断面のような縞模様が見えるのが特徴です(図1右①)。一方、火成岩は、火山の噴火でもたらされたマグマが固まってできる岩石ですが、堆積した地層の割れ目に沿ってマグマが入り込んで固まってしまうことがあります(図1右②)。これをマグマの「貫入」といい、形成された岩石を「貫入岩」といいます。すなわち、この岩石は、恐竜時代(約1億年前)の海で堆積した蝦夷層群の地層に対して、約1,770万年前、ランプロファイアーのもととなるマグマが貫入して固まってできました(図1)。この岩石をさらに詳しく調べていくと、過去の北海道でどのような火山活動があったのかを明らかにすることができます。このように、北海道の地史を解明する上で重要な資料であるため、これからも後世にきちんと残るよう適切に保管していきます。なお、この資料は2026年4月~8月のクローズアップ展示0にて公開予定ですので、ぜひご覧ください!
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引用文献
久保和也・佐藤博之,1984,北海道浦河地域のランプロファイアー.地質学雑誌,90,717-731.
酒井彰・蟹江康光,1986,西舎地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所,92p.